ローカルベンチマーク(ロカベン)って?
ローカルベンチマーク(通称「ロカベン」)とは?
ローカルベンチマークは、「日本再興戦略 改訂 2015」(平成 27 年 6 月 30 日)において、「ローカ ル・アベノミクス」を推進する施策として盛り込まれ、計7回の検討会を経て、平成28年3月4日に経済産業省から公表されました。
この「ロカベン」は、急激な人口減少が始まっている地域経済の持続に向け、地域企業が付加価値を生み出し、雇用を創り続けていくための、地域企業の経営支援等の参考となる評価手法・評価指標とされており、いわば、「企業の健康診断ツール」として位置付けられています。
ローカルベンチマークの使いかた
このローカルベンチマークは、企業の経営者等と金融機関、支援機関が企業の現状を理解し、問題の解決のための対話を深める入口として使用するものであり、具体的には、経済産業省が提供しているローカルベンチマークツールを活用していくこととなります。
ローカルベンチマークツール(経済産業省ウェブサイト)
STEP1 対話の実施
まずは、経営者と金融機関や支援機関等が企業の現状と経営課題を理解するための対話を実施します。ローカルベンチマークツールを活用して、財務情報(決算書)の分析・商流や業務フローの把握・非財務の4つの視点を把握します。
1. 財務情報 - 6つの指標
ローカルベンチマークツールに必要な情報を入力・選択すると、「財務分析結果 シート」に6つの指標が計算され、点数が算出されます。
財務分析結果シートでは、6つの指標(*)について業種平均との乖離を過去3年分把握することができます。
(*)6つの指標
① 売上増加率(=(売上高/前年度売上高)-1)
・キャッシュフローの源泉。
・企業の成長ステージの判断に有用な指標。
② 営業利益率(=営業利益/売上高)
・事業性を評価するための、収益性分析の最も基本的な指標。本業の収益性を測る重要指標。
③ 労働生産性(=営業利益/従業員数)
・成長力、競争力等を評価する指標。キャッシュフローを生み出す収益性の背景となる要因として考えることもできる。
・地域企業の雇用貢献度や「多様な働き方」を考えれば、本来、「従業員の単位労働時間あたり」の付加価値額等で計測すべき指標。
④ EBITDA有利子負債倍率(=(借入金-現預金)/(営業利益+減価償却費))
・有利子負債がキャッシュフローの何倍かを示す指標であり、有利子負債の返済能力を図る指標の一つ。
⑤ 営業運転資本回転期間(=(売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商)
・過去の値と比較することで、売上増減と比べた運転資本の増減を計測し、回収や支払等の取引条件の変化による必要運転資金の 増減を把握するための指標。
⑥ 自己資本比率(=純資産/総資産)
・総資産のうち、返済義務のない自己資本が占める比率を示す指標であり、安全性分析の最も基本的な指標の一つ。 自己資本の増加はキャッシュフローの改善につながる。
2. 商流や業務フローの把握
業務フローについては実施内容と差別化ポイントを把握し、商流は取引先と取引理由を 整理し、どのような流れで顧客提供価値が生み出されているかを把握します。
3. 非財務情報 - 4つの視点
4つの視点(*)に基づく非財務情報について具体的に把握します。
(*)4つの視点
① 経営者への着目
地域企業においては、経営者が与える影響が大きく、経営者の優劣が企業の優劣を左右する面が強いため、経営者との対話に際して、まずは「経営者」自身について知ることが重要です。また、事業の持続性を推し量る観点から、経営者が高齢の場合は事業承継の方針を確認することも欠かせません。
<具体的な着目点>
・経営者自身について(地域経済界における立場、経営手腕等)
・経営者の思い、事業の方向性、ビジョン、経営理念
・経営者の再生に対する意識、スタンス
・後継者の有無 など
② 事業への着目
企業のビジネスモデルを理解するとともに、事業の強みと課題がどこにあるのかを把握することが重要です。
<具体的な着目点>
・事業の商流
・ビジネスモデル、製品・サービスの内容、製品原価
・市場規模・シェア、競合他社との比較
・企業および事業の沿革
・事業用資産と非事業用資産の区別、事業用資産の有効活用
・技術力、販売力の強みと課題
・取引先数、分散度
・企画から商品化までのスピード、一単位あたりの生産時間
・ITの能力、イノベーションの状況 など
③ 企業を取り巻く環境・関係者への着目
企業を取り巻く市場環境や、販売先や取引先企業からの評価等について把握します。
<具体的な着目点>
・顧客リピート率、主力取引先企業の推移
・従業員定着率、従業員勤続日数、従業員の平均給与、年齢構成
・取引金融機関数とその推移、金融機関との対話の状況 など
④ 内部管理体制への着目
地域企業においては、同族企業等による属人的な経営も多いため、どの程度内部管理体制が整っているかという視点も重要です。
<具体的な着目点>
・同族企業か否か、社外取締役の設置状況、組織体制
・経営目標の有無と共有状況
・人材育成の方法、システム
・社内会議の実施状況
・コンプライアンス上の問題の有無
STEP2 課題の整理
STEP1で把握した情報から、企業の強みや経営課題、対応策を明らかにし、経営者と支援機関で認識を共有します。そして、今後の改善への取り組みについても検討を行い、課題解決が円滑に行われるよう、支援機関とどのように連携していくか認識を共有することも重要です。
STEP3 対応策の実施、モニタリング
課題が整理され、対応策が決定したら、それを実行していくことになりますが、経営が継続される限り、常に現状把握と将来目標は変化します。そのため、定期的に現状把握を行い、支援機関と対話しながら、改善活動を柔軟に修正しつつ進めていくことが重要です。
おわりに
ローカルベンチマークは会社の健康診断ツールであり、より健全な会社運営をしていく上で、自社の健康状態を知ることはとても重要です。
しかし、健康診断は一度受けただけでは効果が薄く、定期的に自社の経営状態を見つめ直し、発見された課題を把握し、継続的な改善活動を実施していくことが、企業の発展につながっていきます。
企業の未来に向け、ローカルベンチマークを有効活用していきましょう。