企業会計(会社法)を正確に行うことのメリット
前回の記事「中小企業における企業会計(会社法)と税務会計の違い」で記載しましたが、多くの中小企業は、利害関係者が限定的で正確な計算書類を作成する圧力がないこともあり、税務申告を念頭において決算書(計算書類)を作成している傾向があります。
そのため、企業会計として必要であっても、税務申告では必要のない会計処理は、行っていない場合があり、このような計算書類は、会社の1事業年度の損益や財務状況を正確には反映できていません。納付すべき法人税の金額は算出できているため、税務申告においては特に問題にはなりませんが、これでは、折角時間をかけて会計データを集計して会計帳簿を作成したにもかかわらず、他の役にはほとんど立ちません。
正確な会計帳簿を作成すれば、税務申告の他にも、様々なメリットを享受することができます。
① 自社の経営に対して的確な判断を下すための材料となる
会社法に準拠した正確な会計帳簿を作成していれば、自社の経営状況を正確に把握することができます。また、財務分析も正確なデータに基づいて行うことができ、的確な経営判断ができるようになります。
さらに、月次決算を正確に行える体制を整えれば、月次推移も正確に把握でき、スピーディーな経営判断にも資することになります。
② 経営管理に活かすことができる
経営管理には、予算管理・資金管理・売上管理・原価管理・棚卸管理等様々なものがありますが、これらを会計データを活用して効率的に行えるようになります。
また、より効果的な経営管理や経営判断を実施するために管理会計を導入する場合には、会計データ以外の情報の集約も重要ですが、ベースとなる会計データが正確でなければ、効果的な体制は構築できません。
③ 銀行や取引先等の信用力のアップにつながる
銀行や取引から信頼されることにより、スムーズな資金調達や取引先の拡大等につながります。
また、「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」や「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」に基づいて計算書類を作成し、税理士が所定のチェックリストに署名・押印した場合に活用できる融資制度が、さまざまな金融機関によって用意されています。
自社の経営状況を知り、経営を管理し、的確な判断を下すためには、必要な情報を適切に処理する必要があり、正確な会計帳簿はその第1歩となります。
経営判断や経営管理の材料として、また、銀行や取引先等の信用力のアップのためにも、「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」に則って、会社法で求められている正確な計算書類を作成する検討をしてみてはいかがでしょうか。