請負契約と委任契約の違い
第三者に業務委託を行う場合、その内容が請負契約であるか、それとも委任契約であるか、判断に迷うケースがあります。請負契約に該当する場合には、契約書への収入印紙が必要になります。
委任契約か請負契約かによって、どのような違いがあるのか、まとめました。
民法上の定め
「請負」と「委任(準委任)」については、民法において以下のように定められています。
「請負」(民法第9節632条)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
「委任」(民法第10節643条)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
「準委任」(民法第10節656条)
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
つまり、「請負」は仕事の成果物に対して報酬を支払うのに対し、「委任(準委任)」は法律行為(事務)を処理することに対して報酬を支払うもので、具体的な成果物は求められないという特徴があります。
その他、責任範囲等についても違いがありますので、以下の表に違いをまとめました。
当事務所のケース
当事務所では、お客様のご要望に合わせて、様々なサービスを組み合わせて提供しています。
このように、複合的なサービスを提供させていただくケースでは、サービス内容に「請負」に該当するサービスが含まれていないかを確認し、含まれている場合には、2号文書または7号文書として取り扱い収入印紙を貼付しています。
① 税務顧問
通常の顧問契約には、法人税や消費税等の税務書類を作成するという業務が含まれていますので「成果物あり」となり、作成する顧問契約書は2号文書に該当します。したがって、収入印紙が必要になります。
一方で、会社側で税務書類を作成し、それをチェックする契約となる場合には、成果物がありませんので、委任契約となり、収入印紙は必要ありません。
② 事業計画策定の支援
事業計画(経営力向上計画、早期経営改善計画等を含む)の策定支援において、当事務所は計画作成に必要な情報やデータの分析を実施したり、また、計画書の下書きを作成させていただくケースもありますが、計画書そのものは経営者様が作成するものであるため、当事務所の成果物ではありません。したがって、当事務所の当該計画策定の支援業務は、原則的として、委任契約に該当しますので、契約書の収入印紙は不要となります。
ただし、マニュアルや報告書等の何らかの成果物を当事務所が作成して納品させていただく場合には、収入印紙が必要な請負契約に該当しますので、個別のご依頼ごとに判断して契約書を作成しています。
③ その他コンサルティング業務
当事務所では、内部統制の整備運用や内部監査に係る支援等、幅広い業務を提供していますが、これらの支援業務にかかる契約書の作成に当たっては、支援内容を慎重に確認し、請負に該当する業務が契約に含まれているかを個別に判断しています。